好きな曲を集めてつくったカセットテープを女性にいいと思われたい――。男心をラップにのせた楽曲「サマージャム‘95」が生まれたのは、今から25年前のこと。ストリーミング配信が主流になった今、そのカセットテープが再注目されている。デジタル化する時代に、なぜアナログを求める人が絶えないのか。
【写真】「友達にあげるような質感で描いた」サマージャム'95のカセットテープはこちら!
「サマージャム’95」を歌ったヒップホップグループ、スチャダラパーのANIさん(52)に、カセットテープの魅力を聞いた。
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――ここ数年、カセットテープの売り上げが伸びていて、10代の若者たちも注目するメディアになっていると言います。
新鮮なんじゃないですかね。今はデータ化してモノがないから、iPodやスマホの四角形のサムネイルで完結、みたいなところがある。テープだと触れるし、わざわざA面からB面にひっくり返さなきゃいけない。
2014年に、「サマージャム‘95」というミックステープを限定販売して、それをきっかけにカセットのプレーヤーを買い直しました。いま聞くと、カセットってすぐに終わっちゃうんですよね。iPodとかだと電池が切れるまで、それこそ3日間とか音が鳴っているじゃないですか(笑)。配信もそうですよね。それはそれで良さもあるけど、最近は時間が決まっていて終わりがあるほうが逆にしっくりきてますね。
――「サマージャム‘95」では、夏に聴く用のテープをつくって、女性にいいと思われたいという男心が歌われています。ANIさんもミックステープとかつくったりしていましたか。
していました。レコードを買ったら車で聴く用にテープに録ったり。でも、車にずっと置いているとテープが熱でのびて、うわんうわんうわんって聴けなくなっちゃう。
14年に大阪のイベント会場で販売したカセットの「サマージャム‘95」は、その曲を(1995年に)リリースする前に実際につくっていたミックステープなんです。当時、DAT(デジタル・オーディオ・テープ)でつくっていたものが見つかったから、じゃあ、と。中の曲はDATをそのまま使っていて、ジャケットは(歌詞にある)テキーラでいいか、って自分で手描きでつくりました。コンピューターでテキーラを画像検索したりして、友達にあげるような質感で、テキトーに描いた感じに。
――誰かに渡したりプレゼントしたりするためにもつくっていたんですね。
今って、自分の好きな音楽を誰かにあげたいって思ったら、何をあげるんですかね? iPodとか? YouTubeにミックスリストをアップするとか? あ、プレイリストを共有するのか。
レコードとテープの尺って合っていないから、余ったところに何か入れたくなるんです。貧乏性というか、ぴったりにしたくなる。「後5分あいてるなら、もう1曲入れられるな」とか(笑)。終わるところはフェードアウトさせたり、好きな曲ばっかり集めたり。そういうのが楽しかった。デジタルは便利だけど、「これしかない」という感じは少ないですね。