著者は芥川龍之介の孫、耿子さん。祖父や父は特に好きでなかったようだが、耿子さんは「猫がいないところに私がいるなんて考えられないの」と宣うほどの猫好きだ。エッセイに登場するのは8匹。たとえば娘と息子が雪の日に真っ白な子猫を連れ帰ると、(猫はだめと説得するつもりが)「これはもう飼わなきゃ駄目! 神様からの贈り物よ」と叫ぶ。耿子さんの子も猫好きに育ち、娘の奈於さんは猫の絵の個展を開き、本書のイラストも描いた。表紙の白猫が“雪の日”のミミだ。現在は18歳のメルモと14歳のクローバーと暮らしている。

「母とは猫の写真や動画で盛り上がる。離れて暮らす兄は猫に会うため帰ってくる」と奈於さん……。孫とひ孫が猫をここまで愛すなんて“おじい様”も想像しなかったかもしれない。(本好るな)

週刊朝日  2020年1月17日号