では、一般的なレンズについてはどうだろう。スナップ、ポートレート撮影とは違い、風景撮影の場合は単焦点よりズームレンズの愛用者が多い。アサヒカメラが写真家128人にアンケートした結果では、回答で挙がった59本中、34本がズームレンズで、その割合は58%。
スナップ、ポートレート撮影では標準域のズームレンズがトップとなったが、もっとも多くの風景写真家が挙げたのは望遠から超望遠域をカバーするキヤノンEF100-400ミリメートル F4.5-5.6L IS II USMである。
中西敏貴さんはこのレンズのRFマウント化を待ち望むほど気に入っているという。ほか、使用理由は「被写体のいちばん美しい部分を抽出するため」(古市智之)、「風景、動物、両方の撮影画角に向く」(山本純一)、「細部の描写が繊細」(GOTO AKI)など。ちなみに古市さんは「風景=広角という手垢のついた発想から脱却を図るため」とも。
次に多かったのはキヤノンの標準ズームレンズ2本で、EF24-70ミリメートル F2.8L II USMは「マクロから標準まで表現の幅があり、ボケ味もよい」(桐野伴秋)。EF24-105ミリメートル F4L IS IIは「よい描写力で、よく使う焦点距離」(川北茂貴)、「自分の視覚に合っている」(三輪薫)。
超広角ズームを支持する声もあった。キヤノンEF11-24ミリメートル F4L USMは「解像力もさることながら非現実的な空間が表現できる」(桐野)。ニコンNIKKOR Z 14-30ミリメートル f/4 Sは「小さくて超ワイド。コーナーまで画質がいい」(高砂淳二)、「周辺まで安定した描写性能があり、ゴーストも少なく、朝夕のドラマチックな光をとらえやすい」(深澤武)。
単焦点レンズについては、写真家によって好みが完全に分かれる結果となった。そのうちのいくつかを紹介しよう。
オリンパスM.ZUIKO DIGITAL ED 17ミリメートル F1.2 PRO「すべてのバランス、描写力がいい」(福田健太郎)。コシナVoigtlander HELIAR-HYPER WIDE 10ミリメートル F5.6 Aspherical「目の前に見えている世界が一枚に収められる」(小野寺宏友)。シグマ24ミリメートルF2.8 Super-Wide II「軽い、寄れる、安い」(三宅岳)。ニコンAF-S NIKKOR 24ミリメートル f/1.8G ED「素直なボケ味」(三好和義)。同AF-S Micro NIKKOR 60ミリメートル f/2.8G ED「開放から安心して使用できる解像力の高さ。マクロのわりにはボケ味もなかなかよい」(小林のりお)。
(文・米倉昭仁/編集部)
※文中一部敬称略
※『アサヒカメラ』2020年1月号より抜粋。本誌では「風景を撮る写真家に人気のレンズ ベスト5」や「花と植物」「鉄道」「野生動物と野鳥」「飛行機。スポーツ、水泳、昆虫」など分野別に最適なレンズを紹介している。