市村:確かに。僕は完全にその時期に青春を過ごしてたんですよ。だけど、いまも世界では大変なことが起こっているし、危ない環境に身を置く人がいる。これもそういう中で生き抜かなくちゃいけない人たちの話なので、共通してると言えば共通してるんだよね。

林:なるほどね。

市村:安穏とした中からはこういうすごいドラマは生まれないし、戦争があるとこんな悲惨なことが起きるんだということを見せるのも、エンターテインメントの一つの役割かなという気がしますね。

林:私もベトナム戦争のあとサイゴン(現ホーチミン市)に行きましたけど、まだ戦車の残骸も残っていました。でも、戦前のサイゴンって非常にフランス的な香りがするところだったみたいで、エンジニアなんかはそういう時代を知ってるわけだし、「東洋のパリ」と言われたころの洗練されたものも持ってなきゃいけないわけですね。

市村:フランス人の父親とベトナム人の母親のあいだに生まれたわけだからね。

林:(公演チラシを見て)エンジニア役は市村さんのほかに3人のキャスト(駒田一、伊礼彼方、東山義久)で、キムはトリプルキャストで、高畑充希さんと、昆夏美さんという方と屋比久知奈さんという方なんですね。

市村:昆ちゃんは何回か一緒にやってて、屋比久ちゃんは去年「屋根の上のヴァイオリン弾き」で僕の娘の三女チャヴァをやったんです。そのときは「パパ」って呼んでたんだけど。

林:市村さん、お子さん2人とも息子さんだから、劇中とはいえ、お嬢さんがいて楽しかったんじゃないですか。

市村:息子でも娘でも一緒です、子どもは。身につまされることがいっぱいありました。

林:高畑さんとは初めてでいらっしゃるんですか。

市村:「スウィーニー・トッド」で親子の役をやったけど、キムは初めてです。今度はガップリ組むから楽しみですよ。

林:最後に出てくるヘリコプターには度肝を抜かれましたけど、今回は?

市村:帝劇では出します。初演のときはプロペラが回るぐらいの広さがあったんで、すごいなと思ったけど、いまはちょっと小ぶりになって、それでもいちおう上から下りてきますよ。初演のときはキャデラックもホンモノが上から下りてきたからね。

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