ベトナム戦争を題材にした名作ミュージカル「ミス・サイゴン」。その初演から主役を務めているのが、俳優の市村正親さん。作家の林真理子さんとの対談で、舞台への思いを語ってくれました。
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林:市村さん、相変わらずカッコいいですね。脚、なが~い。
市村:ハハハハ、そうかな。(と言いながら、脚をパッと頭より高く上げる)
林:わっ、すご~い! 今度の帝国劇場の「ミス・サイゴン」(7月24日~8月31日)は、日本初演30周年で、しかも市村さんは、30年前の初演にお出になってるんですよね。
市村:そうです。(主役の)エンジニアで。
林:私、その初演、見ましたよ。本田美奈子ちゃんがキムでした。それ以来、市村さんは、ただ一人ずっと出演し続けてらっしゃるんですよね。
市村:初演のときは僕、43(歳)でした。東宝が「ミス・サイゴン」をやるぞというニュースが入ってきたときはまだ劇団四季にいて。「ミス・サイゴン」は僕、ロンドンで初演を見てるんですよ。
林:私は、「ミス・サイゴン」の初演、ニューヨークで見たんですよ。
市村:あのエンジニアの役、おもしろい役だけど、「四季」をやめない限りオーディションを受けられないから、それで「四季」をやめてオーディション受けたんです。「絶対この役をとってやる!」というメラメラした強い気持ちを持って。あとで聞いたんだけど、演出家は僕が入ってきた瞬間に「あ、エンジニアが入ってきた」と思ったんだって。
林:そうだったんですか。30年前というと1992年で、あのころはベトナム戦争を知っている人がまだいっぱいいましたよね。私がブロードウェーで「ミス・サイゴン」の初演を見たときは、年齢的にも「ベトナムに行ってきたな」という感じのアメリカ人の観客がスタンディングオベーションしてました。でも、いまの日本の観客、ベトナム戦争と言われてピンとくる人、少ないかもしれないですよね。