20年前からインデックス型投資信託を買い続け、“○○ショック”を何度も乗り越えた個人投資家も存在する。その人物こそ、ベストセラーの全面改訂 第3版『ほったらかし投資術』(朝日新書)執筆者の一人である水瀬ケンイチさん(49)だ。IT系の業務に携わる普通の会社員。給与は人並み、仕事も忙しい。そんな水瀬さんが、多忙でも知識ゼロでもできる投資術について、経済評論家の山崎元さんとの共著で解説した。低コストなインデックス型投資信託へ、毎月の自動引き落としで資金を投入していく内容だ。

 著書のタイトルにもなっている通り、積み立てを設定した後は「ほったらかし」で、何もしない。相場が大きく下げたとしても無視。投資を休まない。

 水瀬さんが投資に目覚めたのは00年、20代後半だった。友人との会話をきっかけに同世代の平均貯蓄額を調べたら、自分よりもはるかに多くてショックを受けたそうだ。

 当初は日本の個別株のデイトレードなど、「どうやれば儲かるか」の試行錯誤を繰り返した。はじめはうまくいかなかった。ある日、経済学者のバートン・マルキールの名著『ウォール街のランダム・ウォーカー』を読み、02年から投資信託への積み立てを開始した。

「ITバブル崩壊の余波が残る時期から積み立てをスタートしたので、結果的に安くたくさん買うことができました。投資信託を買い始めて4年目、自分にとって初の急落が来ました」

損失で吐き気がした

 06年のライブドア・ショックだ。このとき水瀬さんが被ったダメージはさほど深刻ではなかった。ところが翌年にサブプライム・ショック(米国の住宅バブル崩壊)が起こった。

「損失が膨らんだうえ、08年にリーマン・ショックまで発生し、吐き気がしたことを覚えています。『ウォール街のランダム・ウォーカー』に書かれていた“理論値”以上の暴落だった」

 リーマン・ショックでは、統計学的に「ここまで下がる可能性がある」というマイナス幅を逸脱するほど下がったのだ。それでも水瀬さんは投資を続けた。

「動揺したのは一瞬で、すぐに気を取り直しました。『理論値を超える下落だから、かなりのレアケースなんだろうな』と。これが一時的な現象なら、むしろ積立額を増やそうと思った」

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