「一括投資の場合、当然ながら基準価額が買値まで戻らないとプラスには転じません。積み立て投資は下落している最中も買い続けるので結果的に安く買えて、基準価額が6200円まで回復した時点で利益が発生しています。それ以降は株価も右肩上がりとなり、大きな成果をもたらしました」

 ところで、フィデリティと言えば相場が大きく下落する度にSNSなどで拡散される記事を思い出す。米国のフィデリティインベストメンツが発信した資料を引用したとされているが、元の資料を調べてもらったところ、現時点でデータが残っていなかった。参考までに14年の原文の英語記事を和訳すると、このようになる。

「調査によると、フィデリティのアカウントを持っている人の中で最も高いリターンを上げたのは、取引口座の存在すら忘れていた人の口座だった」

 同記事には相続争いのため20年以上も放置されていた不動産が結果的に大きな収益をもたらした事例も紹介されている。忘れた、放置したケースが一番儲かった──。結局、ほったらかし投資の極意は「忘れること」ではないだろうか。(金融ジャーナリスト・大西洋平 編集部・中島晶子)

AERA 2022年7月4日号

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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