自室での能條。NYNJのメンバー60人とは、コミュニケーションツールのSlackとZoomを使ってやりとりするのが標準。「Zoomは息をするようにやってきた」というデジタルネイティブ世代だ(撮影/山本倫子)
自室での能條。NYNJのメンバー60人とは、コミュニケーションツールのSlackとZoomを使ってやりとりするのが標準。「Zoomは息をするようにやってきた」というデジタルネイティブ世代だ(撮影/山本倫子)

森発言に「悔しい」の声
仲間と抗議署名を集める

 コンセプトは、わかりやすくポップに。「政治+インスタグラム+デザイン」という打ち出し方は当時日本にはまだなく、インスタを開設して2週間で1.5万人のフォロワーを集めた。DMで「こういうのが欲しかった!」「おかげで初めて投票に行きました」などの声が届き、能條は手応えを感じた。20年に一般社団法人化し、現在フォロワー数は8万人を超えた。

「活動するほど、いろんな人と『ともにやる意味』が大きいと実感できて、どんどん新しい世界が見えてきた。最初は2週間限定で活動する予定だったので、仲間からは『2週間限定って言ってなかった? 詐欺だよ』ってからかわれます」(能條)

 次第に大手メディアから意見を求められる存在に。地上波放送でコメンテーターを務めるレギュラー番組を持ち、ネットメディアのイベントで座を仕切るファシリテーターを務めることもある。

 結成から4年目を迎えた今年、再び参院選の季節が巡ってきた。

 7月10日の投開票を前に、自身がU30社外編集委員を務めるハフポスト日本版の企画で主要7党を順々に訪ねた。能條は、国民民主党の代表・玉木雄一郎へのインタビューで、そもそも給料の水準が低いのに可処分所得が低くなっている若者の現状について、

就職した友達からは『社会保険料が高すぎてビビる』という声をよく聞きます」

 と、若者の温度感そのままに不安をぶつけた。

 政治専門の広告会社「POTETO Media」代表の古井康介(27)はこう話す。

「能條さんは若い世代にとって、ジャンヌ・ダルク感がある。普段からめちゃくちゃ勉強して考えを深めてる上、実際にアクションもしていて、思考と行動の両面があるからなんでしょうね。根深い課題に本質的なアプローチで迫っていくところが、僕はすごくいいなと思っているんですよ」

 能條個人に注目が集まったのが、21年2月、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長だった森喜朗の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」という「森発言」への抗議署名だった。森の言葉に、SNSで抗議の声が上がった。能條は思った。

 ──「ああ、またか」で済ませてよいの?

 森発言のあった日、能條は前出の福田が開いた音声SNS「Clubhouse」に参加していた。福田は、日本の若者が当たり前に性の健康を守れる社会づくりに取り組む「#なんでないのプロジェクト」の代表で、ジェンダー研究にも携わる。Clubhouseでは、「私も身近な人からのこんな発言で悔しい思いをした」などと深夜零時をまわっても次々と声が上がり続けた。能條は、終了後、福田に即連絡を取った。

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