地元、神奈川県平塚市の海辺で。「やりたいことが分からない時期が長かった。今が人生でいちばん楽しい」(撮影/山本倫子)
地元、神奈川県平塚市の海辺で。「やりたいことが分からない時期が長かった。今が人生でいちばん楽しい」(撮影/山本倫子)
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「NO YOUTH NO JAPAN」代表、能條桃子。21歳の時、留学先のデンマークで若い世代を含む「みんな」が選挙を一大イベントとして楽しむ熱気に触れた。この熱気を日本の若い世代にも伝えたいと、活動をスタート。「わかりやすくポップに」をコンセプトにインスタで発信。今では、8万人強に響くメディアへと成長したが、まだまだ道半ば。誰もが生きやすい社会を目指し、笑顔で前へ進む。

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 その2階建てのシェアハウスは、車一台がやっと抜けられる、都心の路地の奥まったところに立っている。

 5月中旬の夕刻、三々五々人が集まってきた。彼らは、「NO YOUTH NO JAPAN(NYNJ)」の大学生メンバー。若い世代の政治参加をもっと当たり前のものにするため、インスタグラムなどのメディアで発信している団体だ。学生を中心に60人ほどのメンバーで運営している。4人が食卓を囲み、ぺちゃくちゃおしゃべりを交わしながら食事の準備を始めていた。

 乾杯のフルーツカクテルをグラスに注ぐのは、NYNJの代表で慶應義塾大学大学院生でもある能條桃子(のうじょうももこ)(24)だ。メンバーの一人が「行列に並んで買ってきた!」とドーナツを皿に盛ると、スイーツ談議に花が咲く。部屋に甘い香りが広がる。

 能條との打ち合わせで訪れていた友人で、発信活動をともにする福田和子(27)も一緒に手伝う。後から、環境問題で活動する仲間もシェアハウスに来て、食事会に加わった。リモートの会議で中座する人もいて、自由な雰囲気。能條が外部団体の代表とパソコンの画面越しにしゃべりながら、食事会のメンバーを紹介する場面もあった。

 能條にとって、こうした会はオンとオフのどちら?と私が尋ねると、

「えーっと、今日はどっちかな。これがオフじゃなかったら、私の日常にオフなんてあるのかな?」

 自虐も交え、屈託なく笑った。

 2019年7月以降、能條の日常は劇的に変わった。参議院選挙直前に立ち上げたNYNJは、若い世代の投票率を上げるキャンペーンとして、グラフィックを多用し、「U30世代にも選挙のことがひと目でわかる」まとめインスタグラムを発信。「20代のための政策が後回しになるのはなぜ?」「そもそも政治って?」といった話題を取り上げた。

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