著者によれば、非行少年の8割が「自分はやさしい人間です」と答えるという──たとえ自身が殺人犯であっても。本書は非行少年の認知機能を分析し、彼らへの教育支援の必要性を説く。

 非行少年の多くは見る力や聞く力が弱く、相手が睨んでいるように見えたり、相手が悪口を言っているように聞こえたりといった誤解をしやすいという。また想像力が弱いために相手の立場を考えることが難しい。そのような困難は彼らの幼少期から表面化するが、周囲から理解されずに生きづらさを抱えてきたと著者は指摘する。彼らへの支援策として認知機能強化トレーニングを紹介する。

 学ぶところが多いが、「犯罪者を納税者に変えて社会を豊かに」の言には危うさも感じた。誰もが生きやすい社会こそ豊かな社会であるはずだ。
(石原さくら)

週刊朝日  2019年9月13日号