
「とにかく自分が旨いと思うラーメンを出したいんです。子どもの頃から食べてきた長岡の生姜醤油ラーメンを自分の手で東京に根付かせていきたいですね」(蓮沼さん)
「百麺」の宮田さんは、蓮沼さんを同期として強く意識している。
「年齢も同じで、独立した時期もほぼ一緒。だけど、ラーメンの作り方は全然違う。一度だけ試作風景を見せてもらったことがありますが、作り込み方が本当にすごくて、刺激的でした。故郷愛も強く、何より『自分が作ったラーメンがいちばん好き』と言い切れるところがカッコいい」(宮田さん)
蓮沼さんも宮田さんを職人として尊敬している。
「自分もかつては家系ラーメンを作っていたので、豚骨醤油のことはわかっているつもりです。でも、宮田のラーメンは衝撃でした。ここまでゼラチン質たっぷりで、ブリックス(濃度)も高いスープを作ろうとすると、寸胴から目が離せないんです。よく作れるなと思います。一度食べただけで、尊敬できる店だと思いました。一つのラーメンでここまで続けるのも凄いし、全店この味を維持していることもすごいです」(蓮沼さん)
22年間一つの味を貫く宮田さんと、紆余曲折から長岡生姜醤油ラーメンのゴールにたどり着いた蓮沼さん。どちらも職人としての長い歴史と苦労が詰まりに詰まった一杯を提供している。シンプルで決して新しいラーメンではないが、長く愛されるラーメンになっていくだろう。(ラーメンライター・井手隊長)
○井手隊長(いでたいちょう)/大学3年生からラーメンの食べ歩きを始めて18年。当時からノートに感想を書きため、現在はブログやSNS、ネット番組で情報を発信。イベントMCやコンテストの審査員、コメンテーターとしてメディアにも出演する。AERAオンラインで「ラーメン名店クロニクル」を連載中。
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