発達障害の人にとって、自らの特性を職場で理解してもらうことが働きやすさにつながる。だが、発達障害は外見ではわからないため、配慮を望んでも理解されにくいケースも少なくない。2022年12月19日号の記事を紹介する。
* * *
都内在住の女性は36歳の時に、発達障害のADHD(注意欠如・多動性障害)とASD(自閉症スペクトラム障害)の併発と診断された。
診断後、就労移行支援サービスなどを利用する中で、特性を理解してもらえる職場のほうが働きやすいのではと考え、障害者雇用での仕事を探し始めた。
入社が決まったのはダイバーシティーをうたう大手IT企業。発達障害者の入社の前例があったことも安心を覚えたという。
入社時や入社後に、障害や自らの特性などをまとめた書類を提出したこともあり、当初は配慮の内容が職場で共有されていたが、その後管理職が代わるなどして対応が変化した。チームメンバーの多くは女性の特性に理解を示し協力的だったが、直属の上司から理解を示してもらえず、「合理的配慮を拒絶された」と女性は言う。口頭の指示では理解できないことがあるため、メールなど文字に残るもので確認させてほしいという要請も、受け入れられなかった。
■外見ではわからない
「発達障害は、外からはわからないので、『○○さん普通じゃないですか』と言われてしまう。外で働ける状態にもっていくまで、薬なども飲んで必死に体調を整えているんですが、働いている姿だけ見て『他の人とどう違うの』とか『配慮する必要がないんじゃないか』『甘やかしでは』と言われてしまう」(女性)
例えばASDの特性として、この女性には「環境の変化に弱い」という傾向がある。座席や隣に座る人が変わるだけでも心理的に大きな動揺を覚えるという。
離職による人の出入りが激しい職場だったため「環境の変化で疲弊してしまう」と上司に相談したときには「みんなも○○さんがいなくなってつらいんだよ、それを乗り越えて頑張っているのにあなただけ弱音を吐くなんて」と言われたこともある。