日本国内で人知れず増加している「対話不能な人」。ネトウヨ(ネット右翼)は保守、パヨクはリベラルを自称することが多いが、論拠を示さずに結論だけ一方的に叩きつけ、他者の異論を受けつけないという点では、本質的な区別がつかない。

 こうした「対話不能な人」は、ネット空間以外にも存在する。電力会社を退社後、松下政経塾を経て郷里・福島でのフィールドワークに身を投じた著者は、被災者をめぐる当地でのさまざまな言説などを例に挙げながら、独りよがりな「正義」が孕む危険性に警鐘を鳴らす。誰もがネトウヨやパヨクになりうる。あさま山荘事件も二・二六事件も人ごとではない。

 白紙状態の子どもたちが、ネット上に飛び交う野放図な主張にスマホを通じて晒される現在、防波堤を築く方策はあるのだろうか。(平山瑞穂)

週刊朝日  2019年7月12日号