
全天球カメラの代名詞となったリコーのTHETA。スリムなポケットサイズで前後に円周魚眼レンズがついたカメラを持ち、ワンショットで360度全てを瞬時に撮れる手軽さは画期的だったが、いかんせんセンサーが1/2.3型ということもあり、画質に限界があった。でも、本体の写り込みを極限まで減らすべく薄く細くなったボディーに大型センサーを入れるのは無理だろう……と思っていたが、THETA Z1はそれを実現したのである。センサーサイズが1/2.3型から1型と、約4倍の面積になったのだ。普及型から高級コンパクトデジタルカメラへステップアップと考えると、画質がぐんと上がったのも理解できよう。

それでいて、基本デザインはそのまま。さすがに一回り大きくなったが、センサーサイズを考えると画期的。薄くおさめるために、センサーをレンズの真下に設置、プリズムを使って3回屈曲させるという構造だ。そのおかげでダイナミックレンジが広くなり、解像感も上がり、高感度時のノイズも減って室内や暗所での撮影にも強くなった。出力される画像は6720×3360ピクセルなので、全天球画像から一部分を切り出して超広角写真として扱っても使えるレベルだ。本体に表示パネルがついたのも朗報。バッテリー残量や撮影モード、残り枚数が表示される。またFnキーが新設され、標準ではセルフタイマーにセットされているので、単体での撮影も便利になった。

画像表示用のモニターはないので、スマートフォンは不可欠。専用アプリを使うことでモニタリングしながら撮影したり、マニュアル露出撮影をしたりできる。ノイズ低減モードやHDR撮影もあり、撮影をコントロールしたいときによい。撮影した画像はスマートフォンに転送し、同社の THETA360.comのほか、全天球画像に対応したSNS(LINEやFacebookなど)にアップロードすれば、360度画像としてぐるぐる回しながら楽しめるほか、スマートフォン用のTHETA+アプリを使えば一部分を任意の形式で写真として切り出せる。

画質がワンランク上がったうえに、RAW撮影にも対応したため、趣味の360度カメラから実用の360度カメラに進化したといっていい。残念なのは、ストレージが内蔵約19GBだけなことと、動画性能に大きな進化が見られなかったことくらいだろう。
写真・文=荻窪 圭
※アサヒカメラ2019年6月号より抜粋

