柴:本当にそう思います。曲を並べたオムニバスCDというのはいくらでも作れるし、レコーディングスタジオで一曲ずつ歌ったカバーアルバムもみんなやっている。でも「ひとり紅白」のような作品は、誰もやったことなかった。
渡辺:そうですね。生だからこそ伝わるという部分がやっぱりあるし、演出を含めた全部の流れで大衆音楽を聴かせていくということができていることがすごい。
ステージでライブなのに番組感
柴:これは「ひとり紅白」という枠組みだからこそ成り立っているわけですが、全体に番組感がありますよね。ステージで、パフォーマンスで、ライブ。なのに番組として作られているようなバラエティー感まである。
渡辺:音楽もライブも素晴らしいクオリティーなんですよ。でもそこに、バラエティーもあるってすごいことですよ。
柴:そうなんです。いわゆる自分が子どものころにバラエティー番組を見ていて、その合間に歌手が出てきて歌う。だから曲を知らなくてもなんとなく見ちゃうみたいな、あの感覚に通じると思うんです。当時を知っている人だけじゃないところに届くエンターテイメント性を感じますね。
渡辺:そういう意味では歌謡史の勉強になるのと同時に、ただただ楽しいという、そのすごさも「ひとり紅白」ですね。
(構成/編集部・三島恵美子)
※AERAオンライン限定記事