桑田佳祐が2008年、13年、そして18年と3回にわたって開催した「ひとり紅白歌合戦」。発売中の週刊誌「AERA」6月10日号では、まもなく60歳の渡辺祐と40代の柴那典が「ひとり紅白」で歌われたこれまでの昭和・平成「大衆音楽」を振り返った。ここでは、その対談の続きを特別に紹介。全編を通してファンを魅了した“桑田マジック”とは。
* * *
柴那典(以下、柴)これまで3回の「ひとり紅白歌合戦」で歌われたのは、全部で171曲ですね。僕は「ひとり紅白」で初めて知った曲がたくさんあります。
渡辺祐(以下、渡辺)「次、GS(グループ・サウンズ)やるから」とか言われて、「わー」っとなるお客さんは、桑田さんと同世代か、少し上の世代が多いはずです。そういう意味で桑田さんよりも上の世代の人が聞いてもブレずに、若い世代の人が聞いてもブレないようにという苦心をすごく感じます。
柴:本当にそうですね。曲の選び方もあるんでしょうけど、知らなくてもすっと入っていけました。
渡辺:「この人のこの曲はすごくいい曲だから、みんなに伝えたい」というのもあるだろうし、「この人のこのサウンド感みたいなものは今聞いてもオッケーだよね」っていうような意味もあるんじゃないかな。
柴:わかります。
渡辺:オールドスクールファンをくすぐるのが、桑田さんが時々やるモノマネです。完全なモノマネじゃないけど、ちょっと寄せて歌う。そういう歌い方をしている曲が何曲かあるんですが、オールドスクールファンからすれば「おいおい桑田、やりたいんでしょ!」という共有する喜びが生まれるんですよね。そのくすぐり方は同世代へのメッセージだと思うんです。歌い方をモノマネしているわけじゃなくて、寄せているだけ。だから桑田さんは桑田さんなんだけど、その寄せっぷりがうまい。この人の歌のうまさは何なんだろうって思いますね。
柴:そうですね。声の使いかたとか元ネタを知らなくても「おっ!」て、思いますもん。