20年1月、エリザベス女王が滞在していた「サンドリンガム・ハウス」に家族が緊急招集された。その際、ハリー王子は「兄から怒鳴りつけられ、父は嘘を話し、女王は黙って静かに座っていた」と打ち明けた。「王室第一主義」に恐怖を覚え、王室離脱を決意したと話す。

 王子を支えてきたはずのメーガン妃はその時、「早く(長男の)アーチーに会いたい」として、生活の拠点を置いていたカナダのバンクーバーにいた。当時でも英国では「メーガン妃は高みの見物」「きつい役どころは王子に押し付ける」と批判されたものだった。

 さて、ウィリアム皇太子は何に怒ったのか、チャールズ国王の嘘とは何か……。ハリー王子が繰り広げた批判に対し、英国内ではむしろ説明不足だとの声が上がる。

 もっとも気の毒なのはエリザベス女王だろう。ダイアナ元妃にかわって孫に接してきたつもりが、王室離脱という悲しい結果を迎えた。女王は「いったいなぜ」と繰り返し自分に問うたことだろう。

サンドリンガムで運転するエリザベス女王。数日前にハリー王子の王室離脱について家族会議を開いた(2020年1月18日、Splash/アフロ)
サンドリンガムで運転するエリザベス女王。数日前にハリー王子の王室離脱について家族会議を開いた(2020年1月18日、Splash/アフロ)

 前後編を通して感じるのは、ハリー王子とメーガン妃は自分たちに都合の良い話だけを集めて、「ラブストーリー」を仕立て上げたことだ。さらには王室メンバーやスタッフ、タブロイド紙から“攻撃”を受けた被害者だと強調。「メーガン妃は国民の人気がきわめて高く、それに嫉妬した王室はつぶしにかかった」と言ってのける。メーガン妃も「私はオオカミのいけにえになった」と真顔で訴えた。

 来年1月10日にはハリー王子の回顧録『スペア』が発売される。販促のため、米国ではテレビの人気司会者ゲイル・キング氏のインタビューを受ける予定もある。キング氏はメーガン妃の友人で、ニューヨークで開かれたアーチーくんのためのベビーシャワーにも駆け付けている。

「まだ語ることがある」というハリー王子。王室を強く批判しておいて、「父と兄には理解してほしい。2人を愛している」とも話す。チャールズ国王は、父親として君主として、どう対応してゆくのだろうか。

(ジャーナリスト・多賀幹子)

※週刊朝日オリジナル記事

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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