根室本線(金山-東鹿越)。北海道で桜列車を撮影するのは、想像以上にむずかしい。そもそも北海道で咲く桜の種類と場所が限定されているわけで、そこに鉄道が関わる撮影地はほとんどない。そんな中、貴重な撮影地が南富良野にある。金山ダムで咲き誇るエゾヤマザクラだ。桜満開のタイミングを読むのがとてもむずかしい桜で、少ない列車本数と天候を条件に加えるとカメラマン泣かせである。桜と列車の撮影地として貴重だが、このエリアを走る根室本線は鉄道存続の危機にある。■キヤノンEOS 5D Mark IV・EF100~400ミリ
根室本線(金山-東鹿越)。北海道で桜列車を撮影するのは、想像以上にむずかしい。そもそも北海道で咲く桜の種類と場所が限定されているわけで、そこに鉄道が関わる撮影地はほとんどない。そんな中、貴重な撮影地が南富良野にある。金山ダムで咲き誇るエゾヤマザクラだ。桜満開のタイミングを読むのがとてもむずかしい桜で、少ない列車本数と天候を条件に加えるとカメラマン泣かせである。桜と列車の撮影地として貴重だが、このエリアを走る根室本線は鉄道存続の危機にある。■キヤノンEOS 5D Mark IV・EF100~400ミリ
この記事の写真をすべて見る

根室本線【かなやま湖とエゾヤマザクラ】

【絶景路線の写真をもっと見る】

 まもなく桜開花の知らせが舞い込み、自然と撮影意欲が湧いてくるシーズン到来だ。今年は新天皇即位に伴いGWが10連休となる。桜前線を追いかけようか、芽吹きからの新緑を追いかけようか、うれしい悩みどころである。

 桜前線を追いかけて北上すると、西日本の新緑が撮れなくなり、芽吹きの美しさに魅了されていると北国の桜を撮り損ねる。毎年、両方を効率よく撮影しようと計画は立てるものの、一度もうまくいったためしがない。

 それだけ被写体があふれた最高の撮影シーズンであるわけだが、今回、私がおすすめする3路線は、「撮り鉄」はもちろん、列車旅を楽しむ「乗り鉄」もおすすめの路線。この春の鉄道撮影行の参考にしつつ、早速撮影計画を立てようではないか。

 根室本線は道央の滝川駅から道東の根室駅を結ぶ約440キロの長大路線。あまりに長距離なので絶景ポイントは数知れずだが、いま私がイチオシのエリアは南富良野にある、かなやま湖周辺だ。

 道東エリアは特急「スーパーおおぞら」が走り、いかにも根室「本線」らしいのだが、この南富良野エリアは普通列車が1日5往復半しか運転されていない。また、2016年の台風被害により、東鹿越駅─新得駅間が不通になっており、根室本線としては途中で寸断された状態である。

 さらに悪いニュースは続くもので、JR北海道の「自社単独で維持することが困難な路線」に富良野駅─新得駅間が挙げられてしまったのだ。

 絶景路線と赤字路線というのは裏腹のようなもので、赤字路線であればあるほど手つかずの自然が多く残っており、絶景ポイントが数多くあるというのは何とも皮肉だ。

 暗い話が続いてしまったが、話を変えよう。今回紹介する金山駅から東鹿越駅にわたる、かなやま湖の絶景は四季を通してぜひとも味わってほしい。撮影はもちろん、列車旅でも堪能してもらいたい私のイチオシエリアだ。

 かなやま湖は金山ダム建設によってできた湖で、かつての根室本線は水没し、現在のように鉄橋を渡り、湖畔に沿って線路が敷かれている。

 ダム湖ゆえにとても穏やかな湖で、早朝は水鏡が期待できるので撮影の狙い目。東鹿越発の始発列車のために、富良野方面から回送列車があるので、その列車と始発列車の2本が鉄道絶景を撮るためには一番のチャンス列車となる。

 新緑シーズンの美しさは言うまでもないが、ほんのわずかな日数だけ、知る人ぞ知る特別な春の絶景がある。

 それは、金山ダムに植樹されたエゾヤマザクラだ。ダムの道路から桜並木が一望でき、その後ろに根室本線が走り、さらには芦別岳が望める。

 私の印象だが、エゾヤマザクラはパッと咲いてあっという間に散ってしまう感があり、満開に合わせて撮影するのがとても難しい。北海道に住んでいれば対応できるだろうが、横浜在住の私にとっては、撮影に成功するまでなかなか時間がかかった。さらに芦別岳も一緒に撮るには快晴でなければならず、条件はさらに厳しい。

次のページ
次は「絶品の桜列車路線」水郡線