■花手毬のようなつまみ寿し
「ご馳走は、走り回って用意せよ」とは良く言ったものだなとしみじみ思います。
一人駆け回るも良し、数人で手分けして駆け回るも良し。まずは、美味しいもんを集めましょ。
府立植物園のほど近く、北山の閑静な住宅街に佇む「花梓侘(かしわい)」へ数日前に予約をしておいた「つまみ寿(ず)し」を受け取りに。木箱を開けると、わっと思わず歓声が上がります。色とりどりの小さな手毬のようなつまみ寿しが15貫。老舗「ゆば長」の湯葉や「半兵衛麩」のよもぎ麩、桜の香りをまとったタコの煮付、スモークサーモン、鯛の昆布じめや鯖、お漬物、様々な味がこのひと箱にぎゅっと詰まっています。どれから食べようかと迷うのも楽しく、しばらく眺めていたくなります。
■春色を愛でる京の和菓子 ガラス細工のような桜の有平糖(あるへいとう)
四季折々の花を象った「紫野源水(むらさきのげんすい)」の有平糖。職人さんの手技から生まれてきた花びらは、口の中にふわりと甘さを広げていきます。記憶にいつまでも留めておきたくなる見目麗しい京のお干菓子のひとつ。ガラス細工のように繊細な桜を愛でながら、話にも花がまたひと咲きしそうですね。
■五感が震え、心はずむ春の上生菓子
京都で日常味わうお菓子は、近所の「お餅屋さん」や「お饅頭屋さん」。特別な時のおもてなしに買いに行くのが「お菓子屋さん」です。
「お菓子屋さん」へ上生菓子を予約して受け取るという行為そのものが、特別な気分へ誘ってくれます。鞍馬口の「聚洸(じゅこう)」は、私の心の和菓子屋さんのひとつ。初めに「初花」「ひとひら」「花筏」などの名前と照らし合わせながら、色使いや形を愉しみます。ほんのりとした桜の香りを感じながら口に運ぶと、しとやかで柔らかな甘味で心がほろほろとほどけていくようです。
■繊細さと優雅さを併せ持つ花の銀製菓子切り
和菓子を楽しむ時に欠かせない道具と言えば、菓子切り。寺町通りに1838(天保9)年から続く「清課堂(せいかどう)」の桜の菓子切を友人からいただいたことがあり、8年間磨きつつ愛用しています。「銀菓子切 花の十二カ月」は、ミニマムな型の中に繊細さと優雅さを併せ持ち、月ごとに少しずつ集め、永く大切にしていきたくなります。大切な人の誕生月への贈り物にも喜ばれそうですね。