ローソン新居浜新須賀町店 2021年度グランドファンタジスタ 川西桂(かわにし・かつら)/1977年、愛媛県出身。製造工場での生産、金融機関での営業を経て、3年半前からローソン新居浜新須賀町店で働く。2021年11月、ローソン独自の認定制度「グランドファンタジスタ」の全国コンテストファイナリスト(まちかど厨房部門)に選出された(撮影/編集部・井上有紀子)
ローソン新居浜新須賀町店 2021年度グランドファンタジスタ 川西桂(かわにし・かつら)/1977年、愛媛県出身。製造工場での生産、金融機関での営業を経て、3年半前からローソン新居浜新須賀町店で働く。2021年11月、ローソン独自の認定制度「グランドファンタジスタ」の全国コンテストファイナリスト(まちかど厨房部門)に選出された(撮影/編集部・井上有紀子)
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 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA 2023年1月16日号にはローソン新居浜新須賀町店・川西桂さんが登場した。

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 コンビニでの仕事の幅は広い。レジ、品出し、カフェ……。加えて、いま広がっているのが「店内キッチン」だ。店内で調理した弁当を、店頭に並べ、できたてを提供する。

 新居浜新須賀町店(愛媛県)に勤めて3年半。接客の傍ら、店内でおにぎりや弁当を作る。「まちかど厨房」の担当だ。

 2021年11月、中国・四国の約1500店からたった1人、まちかど厨房部門の「グランドファンタジスタ」のファイナリストに選ばれた。

 ファンタジスタとはファンタジーから派生した言葉。ローソンでは、スキルを兼ね備えながら、お客さんを魅了する人という意味が込められている。

 とは言え、米を炊く量も、作る手順も、マニュアル化されている。

「もちろんマニュアル通りに作りますが、作る人によって出来栄えが変わるんです」

 おにぎりを握るときは、のりを破らないように。包むときは、ラップがしわにならないように丁寧に。最後に、消費期限が書かれたシールをまっすぐ貼る。これができるかどうかで、おにぎりの見た目は随分と変わる。

 弁当作りのときも、食べる人のことを思う。彼女が作ったカツ丼は、想像以上だ。大きなカツがご飯の上に並び、その周りには、とじた卵が偏りなくのせられている。

 卵が端に寄ったり、ふたに水滴が付いていたりすると、おいしそうに見えなくなるという。

「意外と細かいことの積み重ねで、きれいになります。マニュアルに書いていないことも大切です」

 あくまでコンビニ店員だ。商品を手にレジに来たお客さんに、

「いらっしゃいませ、ありがとうございます」

 と、笑顔であいさつする。忙しくても、疲れていても、必ず「ありがとうございます」と言葉を添える。

「ニコッと反応を返してくれたら、喜んでくれてるんだとわかります。『丁寧ね』と言ってくれる方もいます」

 余計な声掛けはしない。

「私の接客によって、『いい店だったな。次も寄りたい』と思ってくれたら、私もすごくうれしいんです」

 ほんの少しの工夫と言葉で「お客様を魔法にかけているのかも」。彼女は今日も小さな幸せを届けている。(編集部・井上有紀子)

AERA 2023年1月16日号