
■人が笑うと猫もスマイル!
これは“グリメイス”と呼ばれるもので、他者に服従することを示し、他者との関係を穏やかに保つ機能がある。猫も恐怖を感じたときに顔が引きつり笑ったように見えることがあるかもしれないが、もちろんそれは笑っているのではないという。霊長類の中でもチンパンジーは笑うそうだ。
「ただ猫は笑いはしませんが、目を細めたり、うれしかったり気持ちいいときの表情を、人がスマイルと受け取っている可能性は高いですね」
と齋藤さん。猫を飼っていると、うれしいときや気持ちいいときがわかるようになるため、飼い主が笑っていると解釈するのではと指摘する。

齋藤さんに猫と親密になる方法を聞くと、
「ゆっくり瞬きをする人と、そうではない人を比較するとゆっくり瞬きをする人のところに猫は寄ってくるという研究があります。あまり見つめるのはよくないですね」
ヒトやチンパンジーでは見つめ合うのが親和の証しだが、多くの動物は見つめられ続けると威嚇と捉えてしまうという。すでに仲良くなっているならまだいいが、可愛いからと見つめ続けるのはよくないのだ。
じつは齋藤さんも猫を飼っていて、うれしいとき、機嫌が悪いときの接し方は熟知している。
「経験上、猫からかまってほしくてやってくる場合は長くなでてもいいかもしれませんが、自分からかまう場合は適当なところでやめたほうがいいですね。あまり長くやりすぎると機嫌が悪くなります」
「機嫌が悪いときは離れる」が基本なのだ。そうすると猫はスマイルの表情をしていなくても、心の中でスマイルをしてくれるだろう。
齋藤さんは最後にこう締めくくった。
「猫がスマイルしていると感じるのは、飼い主のうれしい気持ちを猫に投影している、つまり自分が笑っている気持ちを猫に見いだして楽しい気持ちになっているのではないでしょうかね」
(本誌・鮎川哲也)
※週刊朝日 2022年12月23日号(2023猫カレンダー付き)