週刊朝日 2022年12月23日号より
週刊朝日 2022年12月23日号より

 近づくことができないくらい警戒するの場合は、しゃがんで猫と同じ目線の高さにすることが第一歩だという。

「うちの猫カフェにも、さまざまな性格の猫ちゃんがいます。人懐っこい猫もいれば人見知り、猫見知りする猫もいます。猫それぞれですね」

 猫との距離を縮める一番の方法はごはんやおやつをあげることだと伊藤さんは話す。

「よほどおなかが空いている場合は別ですが、猫は信頼している人からしかごはんやおやつを食べません。食べてくれるのは安全だと認識しているという証しでもあります。うちには笑顔になる“魔法のおやつ”があるので、それを猫ちゃんにあげて写真を撮る人もいます」

 さらに人がリラックスして接しないと、猫もリラックスせず笑ってくれない傾向があるとも。

「猫ちゃんの心の状態を笑っていると私たちは捉えているのでしょうね。猫ちゃんたちに笑ってもらえるよう私たちはいつも環境を整えています」(伊藤さん)

 果たして、猫は笑っているのか。学者に話を聞いてみた。“ネコ博士”とも呼ばれる上智大学准教授の齋藤慈子さんは約15年前、「犬は賢い、犬は優れている」など、犬をもてはやす研究が盛んに行われていたころ、「いやいや猫だって賢いんだ」と、猫の研究を始めた。

 ただ猫だけを研究しているのではなく、実験心理学、認知科学が専門である研究者なので、客観的に猫が笑うのかを確かめるには最適な人である。改めて猫は笑うのかを聞いてみると、

「猫の顔の筋肉のつくりは人間のそれとは違うので、解剖学的に言うと“スマイル”をすることはできません」

 猫は表情筋が発達しておらず、ヒトと猫では筋肉の大部分が違うため、仮に心の中で笑っていたとしても笑い顔をつくることはできないという。猫の口角はときとして上がることがあるので、それを“スマイル”と認識しているのではと齋藤さんは推測する。

「ニホンザルなどのサルはヒトと筋肉が似ているのでスマイルのような表情をすることがあります。ただ、口角を上げてニッとする表情は喜んでそうしているのではなく、怖い敵が来たときに自分は悪いことをしませんという意思を表したものとされます」

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