タイトルの奇抜さから敬遠してはいけない。「野球にまつわる短編集」と聞けば既視感があるかもしれないが、これまでのスポーツノンフィクションと一線を画す一冊だ。

 表舞台から退いた老ライター、未完の大砲を追っかける熱狂的ファン、応援団を“正業”にする男、東京ヤクルトスワローズの野球選手を自称し全試合を作品にする絵描き、清原和博を慕い続けたPL学園の後輩。選手ではなく、周辺部の彼らの人生を描くことで、特定の球団や野球の魅力を浮き彫りにする。

 著者は自身をスポーツライターでなく“雑文書き”と称するが、ちりばめられた雑文にこそ、本流からはじきとばされた悲哀が転がっている。野球から離れてしまった人も、本書を読み終えたときには、球場に久々に足を運んでみたくなるはずだ。(栗下直也)

週刊朝日  2019年2月15日号