元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。
【写真】「津軽あかつきの会」のスンバラしい茶色い料理の数々がこちら
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先日、念願かなって「憧れの人」に会えた。青森県弘前市で、地域の昔ながらの食文化を伝える農家のおばちゃん軍団「津軽あかつきの会」の面々である。
会のことを教えてくれたのは、青森出身の東京の居酒屋店主。昔ながらの食文化って、平たく言えば「冷蔵庫のない時代に地元の食材を使って生き延びる知恵」ってことで、場所は違えどやはりノー冷蔵庫で近所の八百屋と豆腐屋と米屋だけを頼りに自炊生活をする私が興味を持つに違いないと思ったんですな。
で、確かに会が出した本『津軽伝承料理』を読んだ私はたちまちドはまり。「私がやってることと同じ!」と驚き励まされた。限られた食材も、干したり漬けたりと太陽や風、塩の力を借りて保存することで、フレッシュなものとは全く違う食感や味が楽しめるのである。それは冷蔵庫に頼っていては絶対味わえぬもので、むしろ冷蔵庫が貧しさのモトにも思えてくる。で、この本に出てくる厳しい土地の食生活でも全く同じ「漬けたり干したり」が展開されまくっていた。その豊かなことといったら! 私がやってきたことは間違ってなかった、仲間がいるんだと実感できたのである。
で、そのおばちゃんたちが上京し、その居酒屋でランチを出すというので喜び勇んで駆けつけたというわけ。