途中出場の選手たちが決定的な役割を担ったことも見逃せない。ドイツ戦ではMF堂安律(りつ、24)が同点ゴール、FW浅野拓磨(28)が勝ち越しの2点目を奪った。スペイン戦でも同じく途中出場の堂安、MF三笘薫(25)が同点、逆転のきっかけとなった。特に三笘は全4試合でジョーカー的に起用され、圧倒的な存在感を放った。今大会はこれまでの交代3人制から5人制になったが、これほど控え選手の活躍がクローズアップされたW杯は記憶にない。
ドイツ戦でW杯史上初めての逆転勝利を飾ると、スペイン戦でも逆転劇を再現。4バックと3バック(ときには5バック)を使い分け、レギュラーの11人だけでなく、出場機会を与えられた選手がそれぞれの役割を全うし、試合途中での布陣の変更が功を奏するなど森保監督の采配がさえたことも間違いない。
ただ、ドイツ戦で勝利したことで、続くコスタリカ戦ではスタメン5人を入れ替えてE組内で最も力が落ちると見ていた相手に黒星を喫するなど、日本代表の戦いが安定感を欠いていたことは否定できない。
■低かったボール保持率
「ターンオーバー(メンバーの入れ替え)」を否定するわけではなく、むしろ「8強以上」という目標を達成するためには必要不可欠だったと考えるが、タイミングと人選に問題はなかったか。あくまで結果論だが、ドイツ戦同様のメンバーでコスタリカに挑んでいれば難なく勝ち点3を手にし、余裕を持ってスペイン戦で数人の選手を休ませることができたのではないか。
堅守速攻。しっかり守ってボールを奪うと速攻に転じ、ドイツとスペインを破った戦いぶりは痛快だった。だが、ボール保持率はドイツ戦が24%、スペイン戦に至っては17%と、ボールを握ることを重視してきた森保ジャパンが目指していたサッカーとは対極のものだった。(ライター・栗原正夫)
※AERA 2022年12月26日号より抜粋