いつまで続くか先の見えない猛暑に、疲れを感じている人も多いかと思います。食事も冷たいものや口当たりのよいものばかりを選んでいませんか。
味噌や醤油、納豆、漬け物、甘酒などの伝統的な発酵食品は、栄養素を効率的にチャージできる、からだにやさしい食べもの。「発酵の日」の今日から、さっそく取り入れてみませんか。

あらためて注目される、日本の伝統的な発酵食品

「はっ(8)こう(5)」と読む語呂合わせから、8月5日は「発酵の日」。日本古来の食文化である発酵食品の魅力を広めるため、味噌の製造で知られるマルコメ株式会社(長野県長野市)が制定しました。
味噌や醤油、甘酒などの発酵食品は、消化吸収がよく、腸内環境を整え免疫力を高める作用があるとして、今あらためて注目されています。長い歴史のなかでうまれ、人々の努力と知恵が詰まった発酵食品について紐解いてみましょう。

食品を発酵させると、どんなメリットがあるの?

発酵食品とは、食材を微生物の作用によって加工して製造したもの。納豆、漬け物、かつお節など、主に保存を目的として作られた食品、醤油や味噌、食酢などの調味料、日本酒などの酒類と、その種類は多岐にわたります。海外でも、パン、チーズ、ヨーグルト、キムチ、ピクルスなど、さまざまな発酵食品がありますね。
食品を発酵させることには、3つのメリットが考えられます。

1.保存性が高まる
人間が微生物の存在を知る以前から、食料を保存するための試行錯誤の歴史によって、発酵食品は誕生したと考えられています。
発酵によって増える微生物は、雑菌の繁殖を抑えて自分たちに都合のよい環境を作り出します。そのため、健康被害をもたらす腐敗菌や病原菌の増殖が抑えられ、長期間の保存が可能になります。

2.旨味が増す
食品が発酵する過程で、微生物がタンパク質を分解してアミノ酸が遊離するという現象が起こります。アミノ酸にはグルタミン酸やグリシンなど複数の旨味成分があり、旨味や甘味、酸味や苦味といった複雑な味わいやコクが引き出されるのです。発酵によって食品の旨味が増すことで、私たちは美味しいと感じるのですね。

3.消化吸収がよくなり栄養価が向上する
微生物の発酵作用で食品を分解するときに、新しい栄養成分が生み出されます。また、タンパク質など人間が消化しにくい栄養素が微生物に分解されることで、体に負担をかけず消化吸収がよくなります。煮るだけでは栄養素を半分しか消化できないといわれる大豆をじっくり発酵させた味噌や醤油は、非常に消化吸収にすぐれた発酵食品といえます。

今やスーパーフード!「甘酒」は、江戸時代の栄養ドリンク

海外でも人気の甘酒。起源は、はるか古墳時代にさかのぼります。『日本書紀』(720年)には、木花開耶姫(このはなのさくやひめ)が作った甘酒とみられる天甜酒(あまのたむざけ)に関する記述があるそうです。
現在は、白米に米麹をまぜて発酵させるノンアルコールの麹甘酒、酒粕をお湯で溶かした酒粕甘酒など、複数の製法があります。
甘酒には、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、葉酸、食物繊維、オリゴ糖、システイン、アルギニン、グルタミンなどのアミノ酸、ブドウ糖などが豊富に含まれており「飲む点滴」といわれるほど。甘酒は夏の季語で、江戸時代には暑い夏場の体力回復に用いられていました。

長きにわたって日本人の健康を支え続けてきた発酵食品。猛暑の今年、夏バテや疲労回復に、消化吸収がよく栄養価の高い発酵食品を、ぜひ毎日の食卓に。

参考文献
中島春紫『日本の伝統 発酵の科学』講談社 2018