●新線建設は難しい現代直通運転は今後も増える

 資金的にも用地的にも新線建設が難しくなった昨今、既存のストックを最大限活用して行われる直通運転は鉄道業界のトレンドとなっている。乗り換えの手間も所要時間も削減されるだけでなく、「一本で行ける」というのは、広告価値も心理的効果も大きい効果的な施策である。

 その筆頭格は2001年に運行を開始したJR湘南新宿ラインで、群馬・栃木方面から神奈川まで200km近い距離を結ぶ直通運転は、池袋・新宿・渋谷を中心とした、新たな人の流れを定着させた。15年からは東京駅経由で宇都宮線・高崎線・常磐線と東海道線を接続する上野東京ラインの運行も始まり、首都圏を縦貫する2つの大動脈が完成した格好だ。

 また東武鉄道、西武鉄道、東京メトロと東急電鉄、横浜高速鉄道は、13年から地下鉄副都心線を介した5社相互直通運転を開始、森林公園・飯能から元町・中華街までを結ぶ広域のネットワークが形成された。西武鉄道では池袋線から新宿・渋谷方面への通勤利便性を強く打ち出すとともに、西武沿線から横浜、横浜から秩父方面といった休日の観光利用の促進も積極的に行うなど、直通運転を軸とした路線価値向上を図っている。

 19年度下期には相模鉄道とJR横須賀線、22年度下期には相模鉄道と東急線の直通運転が開始する予定で、人々の流れはまだまだ大きく変わっていきそうだ。

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直通と着席の両立あの手この手の試み