
話題作への出演が続き、存在感があるのは三浦透子。映画「ドライブ・マイ・カー」や、「エルピス」での演技が光りました。芸歴は長く「鈴木先生」の生徒役も印象的でした。所属する事務所ユマニテは安藤サクラや古川琴音、かつては満島ひかりも所属していましたが芝居のうまい俳優が多く注目しています。同じくユマニテ所属の井之脇海は、主役も張れますが確実な演技で、脇にいると安心感があるいい俳優。「あ、あの役やっていたのって井之脇海だったんだ」と後から気づく作品も多く、どんな役でも変幻自在なのが魅力です。
「あなたのブツが~」と「エルピス」両方に出演していた岡部たかしはどちらもハマっていて強烈な印象を残しました。「silent」では川口春奈の友人役を演じた藤間爽子が気になりました。雰囲気があっていいですね。祖母が日本舞踊家・藤間紫(初世)で母は元女優の島村佳江という女優DNA。21年に三代目藤間紫を襲名しました。
制作者で注目しているのは、TBS「不夜城はなぜ回る」の大前プジョルジョ健太ディレクター。真夜中に明かりがついている建物(不夜城)にディレクターがカメラを持ってひとりで突撃し、何をしているのかを調査する番組です。懐に入り込むのがうまくて、深夜に現れた突然の訪問者に、最初は怪訝な相手にも遠慮せずぐいぐいと距離をつめていく。人間ドキュメンタリーとしても面白いです。
22年はディレクターが表に出る番組が一気に増えた気がします。発端となったのは21年に始まった「オモウマい店」(日本テレビ系)。複数の制作者から「やられた」「ああいう番組を作りたかった」という声を聞きました。その成功と、コロナ禍でタレントを使って取材するのが大変な事情もあり、うまくハマった形でしょうか。
お笑いでは、M-1勢では男性ブランコに期待していましたが、残念ながら敗退。そのほかではみなみかわというピン芸人に注目しています。人を攻撃するようなお笑いが敬遠される風潮ですが、この人は悪口や妬みそねみを芸として成立させているのが凄い。
落語では、蝶花楼桃花が気になります。9月に日本テレビ「笑点」の大喜利に女性落語家として初めて参加し話題に。長年レギュラーを務めた三遊亭円楽さんが亡くなり、週替わりゲストでこなしていた席に誰が座るのか。そこに彼女が入れば、56年という長い歴史の中で初の女性レギュラー。新時代の象徴になるかもしれません。
■桧山珠美さんが選ぶカルチャー分野10人
櫻井剛 脚本家
「あなたのブツが、ここに」
長田育恵 脚本家
三浦透子 俳優、歌手
「エルピス」
映画「ドライブ・マイ・カー」
井之脇 海 俳優
「クロサギ」「ちむどんどん」
岡部たかし 俳優
「あなたのブツが、ここに」「エルピス」
藤間爽子 俳優、日本舞踊家
「silent」、三代目 藤間紫
大前プジョルジョ健太 TBSディレクター
「不夜城はなぜ回る」
男性ブランコ お笑いコンビ
M-1出場
みなみかわ お笑い芸人
蝶花楼桃花 落語家
(構成/編集部・高橋有紀)
※AERA 2023年1月2-9日合併号