『飯は食えるときに食っておく 寝れるときは寝る』ぱやぱやくん 扶桑社
『飯は食えるときに食っておく 寝れるときは寝る』ぱやぱやくん 扶桑社
この記事の写真をすべて見る

 国民がツラいときに活躍する職業のひとつである自衛隊。その仕事内容は、大きく分けると国の防衛、災害派遣、国際平和協力活動の3つです。そんな職業を選ぶのは、愛国心に満ち溢れた運動神経抜群のメンタル最強な人々なのだろうと想像してしまいますが、「自衛隊は、そこら辺にいるお兄さんやお姉さんが、『よし自衛隊に入ろう!』と思って入隊し、一生懸命頑張っている組織です」と元自衛隊員のぱやぱやくん。

 ぱやぱやくんとは、Twitterを中心に自衛隊での経験を面白おかしく優しい口調で発信している人物で、記事執筆時点でフォロワーはなんと22万人を超えています。ちなみに、ぱやぱやくんの名前の由来は、幹部候補生学校の教官に「お前らはいつもぱやぱやして!」と叱咤激励されていたことにあるそうです。

 そんなぱやぱやくんの著書『飯は食えるときに食っておく 寝れるときは寝る』では、自衛隊員ならではのメンタルハック・災害対策・ケガをしたときの対応などがまとめられています。堅苦しさは一切なく、エッセイを読むような、ぱやぱやした(のんびりした)読書を楽しめるのが特徴です。

 ここでは同書に記された災害時のライフハックを一部紹介。ぱやぱやくんいわく、災害に備えてまずは「水、ライト、ラジオ」の3点を用意してほしいとのこと。水は脱水症状にならないためだとわかりますが、ライトやラジオはそれほど優先順位が高くないようにも思えます。しかし「光がないと精神的に不安になる」「正確な情報がないとデマに流される」という理由があるとぱやぱやくん。ライトは夜間の救助で見つけてもらいやすいという利点もあります。

 さらに屋外に避難するときはなるべく明るい色の服を着ることをぱやぱやくんは推奨しています。子ども服などでよく見る迷彩柄の服は普段からなるべく着ない・着させないほうがよいでしょう。迷彩柄はその特性上、非常に見つけにくくなってしまうためです。災害はいつ起こるかわかりません。日ごろからそのことを意識して明るい色の服を着たり小物を持ったりしておくようにしましょう。

 災害に限らず交通事故など衝撃的なことが起きると、人間は痛みを認知できなくなり、「何も問題ない」と思ってしまうことがあるそうです。そのため陸上自衛隊や米軍では「ボディチェック」をするように教育されるのだとぱやぱやくんはいいます。

「非常時には自分の感覚を信じてはいけないのです。まず、手足の指がちゃんと動くのか、出血はしてないか、骨折はしていないかを身体を触って調べましょう」(同書より)

 また、人間は疲れると思考能力が低下してどんどん危険な道へと進んでしまうことがあるとぱやぱやくんは指摘します。登山でも下りに遭難が多いのは、まさにそうした心理状態だからなのだとか。疲れていると人間は本来の力を発揮できないのです。

 それは災害時に限らず日常生活でも同じです。忙しい日々のなかで身体的にも精神的にも疲れがたまり、どんどん思考能力が低下して、一般的には簡単にできることができなくなるということが起きます。

 陸上自衛隊のメンタルヘルス研修では「蛇口やシャワーの水を長時間ボンヤリと眺めている隊員がいたら、よくケアをしたほうがいい」と教わるのだそうです。理由は、「人は精神的な疲労がたまると単調な動きを見続ける傾向にあるから」です。

 ぱやぱやくんは自衛隊でのさまざまな経験の中で、生き抜く上で非常に大切なスキルは、同書のタイトルにもなった「飯は食えるときに食え、寝れるときに寝ろ」だと何度も念を押します。

「もし精神的に辛くなったら、暖かいところで、お腹いっぱい食べて、いっぱい寝よう、そして晴れた日に散歩しましょう。そうすればきっと元気が出ますよ」(同書より)

 疲れがたまりやすい12月。2022年たくさん頑張った人は、ぱやぱやくんが言うように、暖かい部屋で好きなものをたくさん食べてたっぷりと睡眠をとる、そんなのんびりとした年末年始を過ごすことを心がけてみてください。

[文・春夏冬つかさ]