下町ボブスレーは、大田区の町工場が力を合わせてボブスレー競技のソリを開発・製作し、五輪出場を目指すプロジェクトだ。6年間に10台ものソリを作り、日本ボブスレー連盟から2回の不採用通告を食らっても、夢をあきらめず世界に行動範囲を広げ、映画「クール・ランニング」で有名なジャマイカボブスレーチームに採用された。本書『下町ボブスレーの挑戦』を11月末に脱稿した時、私たち下町プロジェクトはジャマイカチームとともに五輪参戦に王手をかけていた。
しかし、韓国平昌(ピヨンチヤン)冬季五輪を1カ月後に控えた今、私は眠れない毎日を過ごしている。本書が書店に並び始めた昨年末、「ジャマイカ連盟の浮気」という予想もしない事態が勃発。下町メンバーは問題解決に奔走している。
本書最終章を「6年間の悪戦苦闘を経て、下町ボブスレーは多くを学んだ。わかったことは、下町ボブスレーの物語は常に予想を超える展開になること。2018年2月のピョンチャン五輪が、どんな結末になるのかは誰にもわからない」と締めくくった通り、下町ボブスレーは、挑戦し、挫折し、再起する、という起承転結のドラマを何度も繰り返してきた。今また五輪の直前に、もう1冊本を書けるほどのドラマが起きつつある。『下町ボブスレーの挑戦』の続編、第6章として、今起きていることをここに書く。先に本をお買い求めいただき、私たちの6年間の七転八倒を見ていただいてから、この文章を読み進めていただくと面白いかもしれない。
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ジャマイカチームのエース、ジャズミン・フェンレイター選手は、下町ボブスレー10号機に乗り2017年11月のノースアメリカンカップで銀メダルをとると、12月から活動の場をワールドカップに移した。これら国際大会の順位に応じてポイントが与えられ、五輪の直前1月14日時点の世界ランキングで五輪出場チームが決まる。12月5日、ジャマイカ連盟から「ドイツの輸送業者のストライキで、下町ボブスレーが届かない。12月9日のW杯はレンタルソリで出場する」と連絡がきた。借りたのはラトビア・BTC製のソリだという。