長年ベストセラー作家として名をはせてきた著者が「五十年かけて会得した秘密の書き方」によって執筆したという。「海と山に囲まれた孤島」のような吹上町で育った、夢の中で現実を知る能力や、死者を自在に動かす能力を持った双子の姉妹ミミとこだち。

 やがて彼女たちは、町に込められた秘密や、寝たきりとなっている母の秘密に向き合うことになる……。

 少女と老婆の占師をはじめ、謎めいた人物が次々と登場し、ストーリーはファンタジーとしての色合いが強い。しかし、作中には実際に存在する漫画やドラマなどの名前が頻繁に登場し、どこか現実と地続きのようにも感じられる。

 言葉のマジックを巧みに使い、練り上げられた独特の世界観が魅力的だ。続く「第二話」の展開にも期待が高まる。

週刊朝日  2018年2月2日号