大宮エリーさんと泉房穂さん(撮影/篠塚ようこ)
大宮エリーさんと泉房穂さん(撮影/篠塚ようこ)
この記事の写真をすべて見る

 作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。今回は泉房穂明石市長のインタビューを振り返ります。

【写真】この表情。12年駆け抜けた議場で挨拶する泉氏

*  *  *

 対談場所に来られた泉さんは、私のスタッフにも、いるひとみんなにも、同じように大きく元気な声で、「はい、まいど!」と名刺を渡された。そしてご本人は、「ごめんなさいね、私、マシンガントークだから、しゃべりすぎますから、言うてくださいね」と。なのに、好きな言葉は「四面楚歌(そか)」。

 人が好きで、みんなが過ごしやすい社会を実現するためには人に嫌われても構わない、いや、人に嫌われるくらいじゃないと実現できないという感覚があるのだろう。でも泉さんにしんどそうな重さもなく、実に軽やかで小気味良かった。そう、軽やかさはTwitterで、どんどんつぶやいていることにも表れている。

 やっぱり、兵庫・明石という場所で証明してくれたことはでかい。みんなが、心地いいなあ、未来が明るいなあと思える社会って政治家が頑張れば実現できるんだということを。

 それって考えてみれば、そのために一票投じて税金もおさめて託しているわけだから、やってくれなきゃ困るんだけれど、国政であまりに自分たちの感覚と違うことが行われていて、何を言っても通じない絶望感が私にはあった。

 だから、明石市で市民の民意をくみとり、考え、どんどん情報を開示して、利権や権威や慣習を取っ払いながら実現している泉さんに驚いたのだった。それって希望になる。

 政治って、利権と保身とブラックボックス、と思っていたし今も思っているけれど、泉さんみたいな方がたくさん出てきたり、人を育てていってくれたらこの国も変わるのだろうか。その前に、私も、諦めて黙ってたらダメだよな、とも反省した。黙ってたらどんどんいいようにされてしまう。

 この国は、思っていることを言えない国にもなっている。

次のページ