昨年、中国政府が、ロッテが経営する中国国内のロッテマートやロッテ免税店を営業停止した事件は記憶に新しいが、これは韓国での最新鋭地上配備型迎撃システム「高度防衛ミサイル(THAAD:サード)」の配備用地として、ロッテが自社所有のゴルフ場を提供したことへの報復処置だった。中国政府が韓国でのTHAAD配備に反対していたことはわかっていたが、さりとて韓国企業であるロッテが、韓国防衛のための用地提供を拒否するわけにもいかず、どうしようもなかったのだろうが、これからの時代、あらゆる企業がナショナリズムや国際政治に巻き込まれる局面がさらに増えてくるだろう。

●みんなにいい顔はできない?企業も立場表明を求められる時代

 これは企業の社会的責任(CSR)という意味でも、非常にやっかいな問題だ。これまではCSRと言っても、環境や人権など「絶対的な正義」にコミットしておけばよかった。国連のMDGsや、今で言えばSDGsという「世界共通の目標」もあったから、それを掲げておけばよかった。しかし、政治的な問題はそうはいかない。政治問題とは、たとえば領土問題のように、決して交わることも妥協されることもない対立軸に向き合うということだ。その時、企業はどうすべきなのかーー。覚悟を決めて立場を明確にするしかない。そういう状況が増えるだろう。

 今回の水原希子炎上事件でも、サントリーはメディアの取材に対して、「今回の当社の投稿に対して、ツイッター上でキャンペーン趣旨とは異なるコメントが多くついている事態を残念に思っております」とコメントしている。これまでの企業対応の常識で考えれば妥当なコメントだ。しかし、今回はこのコメントに対しても批判意見が出ている。「サントリーはなぜ、明確にヘイト発言に対して遺憾の意を示さないのか?」という批判だ。「明確にヘイトには反対だと表明してくれたら、サントリーのファンになったのに」というわけだ。立場を明確にしないことによって、対立する双方から批判を浴びるという図式にもなってしまっている。

 むしろ、アパホテルが中国から批判を浴びても自らの政治的スタンス(南京大虐殺や従軍慰安婦の存在の否定)を変えず、かえって日本の保守層のファンを増やしたように、立場を明確にしたほうが有利に働くケースも増えてくるだろう。リベラルだろうが保守だろうがどちらでもいいが、双方を取り込むことが難しくなる時代には、どちらを選ぶかは事前に決めておく必要があるだろう。企業にとっては本当にやっかいな時代になりつつある。

(ソーシャルビジネス・プランナー&CSRコンサルタント/株式会社ソーシャルプランニング代表 竹井善昭)

暮らしとモノ班 for promotion
インナーやTシャツ、普段使いのファッションアイテムが安い!Amazon スマイルSALEでまとめ買いしたいオススメ商品は?