女装姿でテレビCMに出たこともある名物編集者の著者が、「結婚」を柱に半生を振り返ってゆくエッセイ集だ。W不倫の末に、写真家の神藏美子さんと再婚する際、一つだけ約束させられたことがある。「嘘をつかない」。前の結婚では複数の女性と関係をもち、前妻に対して嘘に嘘を重ね、自身も心の負荷に耐え切れずにいたからだ。
現在の妻から「恋愛したい」と告白される場面がある。戸惑い、受け入れようとする夫。とても不思議だが、隠し事がないのが夫婦の秘訣らしい。小さな喧嘩は頻繁らしいが。
前妻のことから性欲のことまで包み隠さない。淡々と哀歓のある筆致で、立体的に場面が浮かびあがる。特に「子供が欲しい」という妻に寄り添って始めた不妊治療を、やめようと二人で決断をするシーンが胸に迫る。
※週刊朝日 2017年7月21日号