この読売新聞の記事については、リークしたとされる官邸側の幹部が「こんな人物の言い分に乗っかったら恥をかくぞというマスコミへの警告だ」とオフレコ発言した事実をネットメディアが報道した(「リテラ」5月24日)。実はNHKも前もって前川氏のインタビューを収録していたのに結局放送はしていない。読売新聞の報道で官邸側が発した「マスコミへの警告」が効いたのか。なんらかの忖度の存在をうかがわせる事実だ。NHKが前川氏のインタビューを収録済みの事実はTBS「報道特集」(6月3日放送)だけが伝えた。

 問題の文書を「怪文書」と表現し、形ばかりの調査を行って「存在が確認できなかった」とした文科省や官邸。前川氏の証人喚問や参考人招致の要求に「民間人だから」と拒否した政府与党。最近まで官僚機構の頂点だった人物が実名で証言しても一向に動かない政治に対して、強く疑問を呈した番組はほとんどない。

●首相らのすりあわせを再現した日本テレビ

 各社の記者たちにも忸怩たる思いはあったのだろう。6月5日にNHK「ニュース7」は「獣医学部新設『文書』」が“部署ごとの共有フォルダにも一時登録”されていたと複数の文科省の現役職員が証言したと伝えた。“文書は確認できなかった”という文科省の説明もその調査対象は獣医学部を担当する専門教育課の共有フォルダだけで他の部署の共有フォルダは調べていなかった事実も明らかにした。最初から結果ありきのずさんな調査だったことを暴いた報道だ。TBSも6月7日の「NEWS23」で文科省の現役職員が文書を共有していた事実を認めていると“速報”した。

 「文書は存在しない」「再調査しない。(なぜなら)必要ないからだ」。そんな猿芝居のなか事態が急転したのは6月9日。文科省が一転、追加調査を表明した。

 菅官房長官の記者会見での報道側の厳しい追及ぶりを伝えたのがTBS「ひるおび!」だった。記者たちが矢継ぎ早に“怒涛の質問”で長官を攻めたことを伝えた。「やらないよりやったほうがいいのは誰でもわかる。要するにやりたくないのか?」。記者からのこうした声に押される形で政権も再調査に踏み切った。

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