生前の開高健を直接に知る著者による評伝。本書は資料や作品を丁寧に読み解きつつ、当時の開高のたたずまいや、交わした会話を回顧しているところに特徴がある。

 壽屋(現・サントリー)社員として猛烈に働きつつ、芥川賞作家として執筆に追われた開高。周囲を笑わせる道化師であった半面、内奥には苦しみを秘めていた。そんな彼の姿を、作品や書簡の引用と、著者が後輩社員として得た印象とを往復しながら描き出している。第7章、『夏の闇』のモデル問題について紙幅が割かれており面白く読んだ。才能ある男はもてるのだ。

 本書装丁のイラストは、アンクル・トリスの生みの親であり開高と同年入社の柳原良平氏によるもの。

 ちなみに開高のベトナム従軍ルポは当時、本誌に掲載されていた。

週刊朝日  2017年7月7日号