「ウエストランドはいい例でしょう。彼らの漫才は、多くの人が心の奥で思っていても口にしないことを言葉にし、理屈をプラスして強烈に罵倒していく。そのスタイルが受けたのだと思います」(岩中さん)
わが道を行く芯の強さを持つのは、藤井風も同様だ。幼いころから続けるYouTube投稿でファンを増やしデビューまでたどり着いた。岡山弁を交えた歌詞は新鮮だ。
「YouTubeの動画はエンタメ志向でバラエティー豊かですし、岡山弁を隠すことなく自然に振る舞っている。郷土愛が深く、自由奔放に自身の生き方を貫く。その個性の強さはまさに岡山県人だと言えます」(同)
岩中さんによれば、「岡山県人はときに頑固になりがち」だが、それがよい方向に作用して偉業を達成したのが山本由伸だ。
「山本投手はウェートトレーニングをしないことで有名ですが、筋骨隆々の選手たちが多い中で周囲に惑わされることなく、持論があれば貫き通すという岡山的な生き方の体現者と言えるのではないでしょうか」(同)
その底には、岡山県人ならではの「インテリジェンス(知性)の高さがある」と岩中さんは評する。その土壌は江戸時代から育まれていた。
「子どもに読み書きを教える寺子屋の数は、現在の長野県、山口県に次いで全国で3番目。さらに、現在で言う大学のような教育機関である私塾は全国でも突出して多かった。教育重視の風土の中で育っていった岡山県人は、この先しばらく目立ち続けるような気がします」
偉大なる岡山県人の歴史は、今に始まったことではないということだ。岡山出身で『おもしろ県民論 岡山はすごいんじゃ!』(マイクロマガジン社)の著書があるルポライターの昼間たかしさんは、独自に分析した県民性をこう解説する。
「まず、岡山県人は『先見の明、先進性』がすごいんです。日本で初めて自動車を作ったのは山羽虎夫という岡山県人。古くは、天然痘治療に多大な貢献をした緒方洪庵もいます。彼は福沢諭吉や大村益次郎を育て、医学や蘭学を広めました」