小川紗良(おがわ・さら)/1996年生まれ。早稲田大学卒業。俳優、文筆家、映像作家として活動。著書・監督作に『海辺の金魚』など。保育士の資格も持つ(撮影/写真映像部・上田泰世)
小川紗良(おがわ・さら)/1996年生まれ。早稲田大学卒業。俳優、文筆家、映像作家として活動。著書・監督作に『海辺の金魚』など。保育士の資格も持つ(撮影/写真映像部・上田泰世)
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 本と映画は、私たちの心にいつでも寄り添い、人生を豊かにしてくれる。俳優・文筆家・映像作家の小川紗良さんが出合った大切な作品を語る。AERA 2023年5月1-8日合併号の記事を紹介する。

【小川紗良さんが語った「人生を豊かにする」本と映画がこちら】

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 創作をしていると、今何をやるべきかわからなくなるときがあります。そんなときは、映画や本の世界に浸ります。現実から離れて思考を巡らせることで、自分と向き合えるんです。

 大事な価値観がわからなくなったときに立ち返るのは、田中美津さんの『かけがえのない、大したことのない私』です。「私」という存在は唯一無二のものだけど、大きな世界ではちっぽけな存在でもある。そう捉えると、気持ちが少し楽になります。

 田中さんは1970年代のウーマン・リブ運動の筆頭に立っていた、フェミニズムの歴史のなかでもパイオニア的な方です。強い女性というイメージを抱きがちだけど、この本からは挫折や葛藤、繊細さも伝わってくる。人って多面的で、強い面もあれば弱い面もありますよね。矛盾しているものを抱えているのが私で、それでいいんだと思わせてくれる本です。

■悩みや願望を映す鏡

 本を選ぶときは、タイトルにひかれることが多いです。さくらももこさんが妊娠や出産について語った『そういうふうにできている』もそう。ほっこりしたイメージがあるけど、アイロニカルなところがある方で、そこが人間らしくて大好きです。生きるって大変なことがあるし、出産や妊娠ってその最たるもの。それを通して、「そういうふうにできている」って境地に行き着いたのも面白いなって。

 実は、高校生ぐらいまで読書に苦手意識がありました。小学校に入ると、みんな絵本から「青い鳥文庫」とかに移行するじゃないですか。一生懸命読んでみたけど、うまく移れませんでした。興味のままに小説を読むようになったのは大学に入ってから。通っていた早稲田の周りは古本屋さんも多く、いろんなことに関心がある友人もたくさんいました。そのなかでやっと本を読みたいという気持ちがわいて、自分の意思で初めて読んだ純文学が宮本輝さんの『星々の悲しみ』でした。

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