甘利明前内閣府特命担当相の金銭授受疑惑。舛添要一前都知事の公金流用疑惑。育休取得で話題になった宮崎謙介前議員の不倫疑惑。新谷学『「週刊文春」編集長の仕事術』は数々のスクープを放った「週刊文春」編集長がビジネス書の形で仕事の現場を語った本だ。
〈私自身は「スキル」や「ノウハウ」を意識して仕事をしてきた覚えはない〉〈世の中で起こっている様々な出来事、あるいは話題の人びと。それらを「おもしろがる」気持ちがスキルやノウハウよりも大切だ〉。うわっ、かっこいい!おっしゃっていることはしごく真っ当なんだけど、勝ってる人はやっぱ強気だよね。
とはいえ、週刊誌記者も楽ではない。〈週刊誌の編集者や記者なら誰でも、他人に絶対明かせない「ネタ元」を何人か持っている〉。こういう人とは〈たいてい人目につかない場所で密会する〉。〈会うのは常に「完全な個室」だ。もちろん入るときと出るときは別々で、必ず時差を設ける〉
相手の懐に飛び込んでしゃべらせるのは大切だが、〈「そろそろいいかな」と思ったところで、バシバシ核心に迫り、聞くべきことを聞いていかなくてはダメだ〉。ショーンK氏に取材した日のこと。彼は気持ちよくしゃべっていたが、途中で古い写真を出して尋ねた。〈これ、あなたですよね?〉〈顔全然違いますけど、整形してるんですか?〉。とたんに相手はうろたえ、発言が揺れはじめた。
〈週刊誌は究極の「結果オーライ」ビジネス。最終的におもしろいことが大事なのだ〉〈週刊誌は美しさより鮮度。突貫工事でもイキのいいネタを突っ込むべきなのだ〉とイケイケの発言が続くが、意外というか、共感したのは〈私はSNSのたぐいは一切やらない〉という点だった。〈本当の信頼関係は、やっぱり直接会わないと生まれない〉〈一対一で、サシで、目と目を見ながら話すべきだ〉
〈私の雑誌作りの中に「マーケティング」という文字は全くない〉と豪語する人のじつは硬派で古風な仕事術。感服しつつ、私には務まらないこともわかりました。
※週刊朝日 2017年5月26日号