大阪・西成で長年、調査や支援活動に携わる社会学者が、あいりん地区が抱える「貧困」問題の実相をまとめた。

 高度経済成長期以降、日雇い労働者や生活困窮者を数多く受け入れてきたことで知られるあいりん地区。近年は住人の高齢化などに伴い、住まいや孤立死にかかわる問題が増加。宿泊者減少に悩む簡易宿泊所をサポーティブハウス(集合住宅)として再利用するなど、あらたな支援のかたちが生まれている。現在のような状態が今後も続けば、行政の負担は増し、貧困は社会から見えない場所に追いやられる。生活困窮者を特定の地域に集中させるのではなく、各地域の受け入れを増やしていかねば、問題は根本的に解決しないのではないか、と問う。10年以上、地道な現地調査を続けてきた著者だからこそ、その提言には重みがある。

週刊朝日  2017年5月19日号