「女性活躍推進」と政府はいうが、本当はどうなのか。前田正子『大卒無業女性の憂鬱』の副題は「彼女たちの働かない・働けない理由」。統計を駆使して、無職女性の実態をあぶり出した労作だ。
女性の就業率はじつは地域によって大きな差がある。25~44歳の女性の就業率は、トップが福井県で86.8%、最下位は神奈川県で67.6%である(2015年。全国平均は72.0%)。既婚女性の就業率は、上から島根県、山形県、富山県、福井県、鳥取県。低いのは奈良県、大阪府、神奈川県、兵庫県、千葉県。トップの島根県は74.7%、最下位の奈良県は49.5%で、25ポイントもの差がある(10年。全国平均は57.8%)。
概して、北陸や山陰では女性の就労率が高く、奈良県、兵庫県、大阪府などの関西は低い。女性の就労意欲には地域差があまりないのに、なぜなのか。雇用の多寡や通勤などの働きやすさの問題もあるけれど、それだけではない。
関西は女性の進学率は高いのに「子育ては母親の義務」という意識が強く、それが女性の就労を妨げているというのである。〈驚いたのは、関西の大人たちが、様々な場面で女性が働くことにネガティブな発言を繰り返すことだった。(略)関西で増えているのは非正規雇用ばかり。世代交代や経済のダイナミズムから、関西は取り残されているのではないか〉
その昔、ファッション雑誌で、東京の20代女性は過半数が一人暮らし、関西では過半数が社長令嬢という記事を読んだことがある。お嬢様は就職しない? でももうそんな時代じゃないからね。
そもそも無職女性の問題は「家事手伝い」という隠れ蓑によって見過ごされてきた。しかし〈本人も周囲もそれで納得していると、どこにもつながらないまま時間だけが過ぎる。そして親が年をとり、介護が必要になると、その娘が介護を担うことになる〉。〈無業女性の問題は、そのまま女性の貧困問題に直結し、抜き差しならないところまで来ている〉
娘を持つ親御さんたちに読ませたい本だ。特に関西在住の。
※週刊朝日 2017年5月19日号