スイートルームではしゃぐヴィヴィアンだが、ここで『プリティ・ウーマン』を代表する名場面が登場する。バブルバスにつかり、ウォークマンでプリンスを聴きながら熱唱する場面だ。そしてヴィヴィアンは、娼婦だから身体は許すが、くちびるへのキスはしないと言う(役柄が娼婦だから、エドワードとの濡れ場もあります)。
ヴィヴィアンはテレビのコメディ番組を見ては大口を開けてゲラゲラと笑い、食事を用意すれば椅子ではなくテーブルに尻を乗せて食べようとするような女性だが、型にはまらない奔放さが気に入ったのか、エドワードは契約を申し出る。買収相手の社長から会食に誘われ、エスコートする女性が必要になったのである。
「ビジネスの話をしよう。日曜日までぼくと過ごさないか。従業員として雇う。1週間いてほしい。ぼくの言うとおりに動け」
「嬉しい提案だけど、リッチな二枚目は女性にモテモテでしょ」
「いや、プロの女がいい。買収が最終段階に入ってね、今週は恋愛どころじゃないんだ」
「24時間態勢だから高くつくわよ」
「いいとも、ギャラを決めよう。望みの額は?」
一週間の恋人契約料は3000ドルだ。普段の収入から見れば、破格の報酬である。
映画は、ここで中盤のクライマックスに突入する。ディナー用のエレガントな洋服を買うよう言われ、ヴィヴィアンはハリウッドの有名ブランド店に出かけるが、夜の街角に立つ恰好で出歩いたものだから通行人にはじろじろと見られ、ブティックではけんもほろろに追い返されてしまう。
「一流品ばかりね、これはいくら?」
「似合いませんわ」
「値段を聞いているのよ」
「高いですよ」
「お金ならあるわ」
「当店にはお客さまに似合う服はありません。よその店へ、どうぞ、お引き取りください」
ホテルに戻って支配人に泣きつくが、支配人からもヴィヴィアンは白い目で見られている。が、この『プリティ・ウーマン』だけでなく後にリチャード・ギアとジュリア・ロバーツが再び共演する『プリティ・ブライド』やアン・ハサウェイ主演の『プリティ・プリンセス』にも出演のヘクター・エリゾンド扮するバーニー・トンプソン支配人がヴィヴィアンの良き協力者になり、理解者にもなるのだ。
「当ホテルは連れ込み宿ではありません。ルイスさまは特別なお客さまです、我々の大切な友人です。ですが、何とかしましょう。あなたは彼の……、ご親戚で、なるほど、つまり、姪御さんですな。ルイスさまがホテルを引き払えば、あなたも出て行く。よろしい、あなたに相応しい服装を用意いたしましょう」