私たちがどうしても避けては通れないあの問題といえば?と聞かれて老後の不安が思い浮かぶ方もいらっしゃるのではないだろうか。本書は老いをテーマにした短編集。タイトルは『ついに、来た?』。そう、老いというものは望まなくともいつか絶対にやってくる一大事なのだ。

 全編において主人公は女性で、みな介護をする側の立場。つまりこの本は介護小説だ。「何かあったときに手をさしのべたい人とそうでない人がいる」とユキは思う。女性のホンネは残酷だが真理を突いている。亭主関白の夫に黙って要介護認定を申し込んだマリ、離婚と介護と息子の反抗期が重なったハルカ、毎日自転車で伯母宅にごはんを届けるマツミ。

 それぞれの悩みは根深い。「あー、どうしたもんかねえー」のマツミの声には、共感せざるを得ない。

週刊朝日 2017年4月7号