1月25日放送の「ひるおび!」(TBSテレビ)は、トランプ大統領が「対日自動車貿易は不公平」と発言したことや「日本は(為替操作による)円安誘導を何年もやっている」と名指しで批判したことを受けて、いずれも事実に基づかない批判であると指摘していた。また「ウェークアップ!ぷらす」(読売テレビ)も2月3日の放送で同様の特集を組み、トランプ発言の信憑性を検証した。

 5点目は、メディアの存在意義に関わる最も大切な要望である。トランプ氏は既存のメディアを敵視しているようだ。就任1週間前の記者会見で、CNNを「嘘つきメディア」呼ばわりし、同局の記者に質問の機会を全く与えようとしなかった。その一部始終を視聴していて、背筋が寒くなり、暗澹たる思いになった。

 ジャーナリズムの使命は国民の番犬として権力を監視することにある。民主主義の根幹を支える基本原理でもある。それを意に介さず踏みにじる指導者は言語道断だ。監視されるべき側=権力の頂点に立っているという自覚が欠けているのではなかろうか。ジャーナリズムの価値を揺るがせてはならない。そのために世界のメディアは国境を越えて手を繋ぎ、それぞれの国や地域から忌憚のない批判精神を発揮すべきである。

 日米関係においても、仮に安倍政権がトランプ政権の理不尽な要求に屈し、米国におもねるような政策や措置を打ち出しそうな状況に至ったときには、日本のテレビメディアは日米両政府の襟を正すような報道に徹することが必要だ。

 米国の女優メリル・ストリープさんはゴールデングローブ賞の授賞式(1月8日)で「私たちは権力者を批判する、信念のある記者を必要としています。だから建国の父たちは報道の自由を憲法に記したのです」と述べ、メディアの奮起を促した。心に響く言葉である。

※『GALAC(ぎゃらく) 4月号』より

伊藤友治(いとう・ゆうじ)/元毎日新聞アフリカ特派員、元TBSロンドン支局長、元TBS外信部長

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