精神科医が自身の体験をもとに、いじめの罠のような構造を小学校高学年の読者にもわかる言葉で解き明かす。

 いじめのかなりの部分は、学校の外で行われれば立派な犯罪だ。家や社会で弱い立場に置かれた子供は権力に飢えている。その飢えは家の中で権力的に支配されている子ほど増大し、いじめの手口を家や学校での大人の態度から学ぶ。

「孤立化」「無力化」「透明化」の三つの段階を経て、子供は心理的に追い込まれる。加害者のきげん一つで運命が決まり、多額の金銭の搾取に怯えるむき出しの「出口なし」の暴力社会では、大人のように刑罰を受けることもない。追い詰められた子供の抱える罪悪感や劣等感、そして大人に対する不信感に寄り添いつつ、周囲の大人が子供の安全を確保できるようになればとの願いがこもる。

週刊朝日 2017年3月3日号

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