先発の補強が必要な巨人、DeNA

 他球団の編成担当は「長いイニングを投げられる投手ですし、多彩な変化球を駆使して打者を打ち取る引き出しが多い。FA権を行使した場合は獲得に乗り出す球団が出てくるでしょう。人的補償が必要なBランクですが、大きなネックにはならないと思います」と語る。

 柳は宮崎県都城市出身で、少年時代はソフトバンクの春季キャンプに足を運んでいたという。リーグ連覇を目指す今年のソフトバンクは先発陣のコマはそろっているだけに、柳がFA権を行使した場合にどのような判断をするか。

 同一リーグで対戦する球団は、柳の実力を熟知している。巨人は先発陣がそろっているとは言えない。エースの戸郷翔征は春先から痛打を浴びる登板が続き、2度のファーム降格を経験。15試合登板で4勝7敗、防御率4.28は満足できる数字ではない。井上温大、赤星優志も一本立ちしているとは言えず、グリフィンは右膝痛で戦列を離れている。開幕から先発で稼働しているのは山崎伊織のみ。柳が加入すれば先発陣の層を厚くする意味で大きなプラスになるだろう。獲得を検討する価値が十分にある。

 そして、DeNAも近年は積極的に補強に動いている。昨年はレギュラーシーズン3位からCS、日本シリーズを勝ち抜いて日本一に輝いたが、今年は優勝争いに絡めていない。シーズン途中に藤浪晋太郎、ビシエド、フォードを補強して話題になった。先発陣の核であるジャクソン、ケイ、バウアーは来季の去就が不透明で、退団に備えて補強が必要になるだけに、柳の獲得を目指す可能性はある。

「DeNAは伸び伸びしたチームカラーなので、柳が入団した場合は溶け込むのに時間がかからないでしょう。中日で同期入団だった京田陽太、明大で同学年だった佐野恵太がいますし、気心が知れた選手の存在は心強いでしょう。ビシエドも長年一緒にやっていましたしね。横浜高校の先輩・筒香嘉智、後輩の度会隆輝がいるし、縁のある土地だと思います。移籍を視野に入れた場合は有力候補になるのでは」(スポーツ紙デスク)

 DeNAはバウアーの年俸が出来高を含めて9億円を超えると報じられているが、この高額契約に見合った活躍ができているとは言えない。20試合登板で4勝10敗。防御率4.34、15被本塁打はリーグワーストで、不安定な投球が目立つ。先発登板した8月21日の広島戦では、5回の投球を終えて一塁ベンチに戻る時にファールグラウンドに転がっていた小園海斗のバットを蹴った行為が物議を醸した。

「先制点を許してイライラしていたのかもしれませんが、侮辱行為とみなされても仕方ない。大きなイメージダウンになりますし、投球内容を見ても来季の契約は微妙です。バウアーが退団となれば、柳にFA補強で資金をつぎ込める。他球団と争奪戦になっても十分に勝ち目はあります」(前出のスポーツ紙デスク)

 もちろん中日は残留交渉に全力を注ぐだろう。柳はどのような決断を下すだろうか。

(ライター・今川秀悟)

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