
野球は1つのプレーで、試合の流れが大きく変わる。現場からの評判が芳しくないのが、ファウルゾーンの一、三塁側にせり出す形で設置されている防球ネットがない観客席だ。
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東京ドームでは「エキサイトシート」の名称で設置されているが、選手が捕球しようとした際に観客がグラブを差し出したためにファウルになるケースが何度も起きている。7月21日に行われた巨人-阪神では、初回の阪神の攻撃で、大山悠輔の高々と舞い上がった打球がファウルゾーンへ。右翼の丸佳浩がスタンド際まで追いかけ、グラブを観客席に差し出して捕球したかに見られたが、エキサイトシートに座っていた観客がグラブを出して捕球。ファウルの判定になった。さらにこの試合の8回の巨人の攻撃でも、中山礼都の打球がフライになり三塁側ファウルゾーンへ。三塁手の佐藤輝明が捕球しようとしたが、エキサイトシート最前列にいた男性が腕を伸ばしてキャッチ。やはりファウルとなった。
「この後、大山も中山も凡打に倒れましたが、別の試合でエキサイトシートに座った観客が野手より先にグラブを差し出してファウルになった後、打者が『打ち直し』の形で殊勲打を放ったケースがあった。選手との距離が近く、臨場感あふれる観客席ですが、試合進行を妨げるリスクがあるのは事実です」(スポーツ紙デスク)
防球ネットがない観客席が設置されているのは東京ドームと京セラドーム。ソフトバンクの本拠地・みずほPayPayドームも昨年までは一、三塁側に設置された「コカ・コーラシート」に防球ネットがなく、球場側も「野手と同じ気分で一球一球に集中できる観戦エリア」と売りにしていたが、今季から高さ2.5メートルの防球ネットを設置。さらにこの8月8日には、来年のオープン戦から防球ネットを高さ21メートルのワイヤー吊り下げ式ネットに変更し、コカ・コーラシートのフェンスまで拡充すると発表した。観客に安全に試合を観戦してもらうと共に、選手が全力でプレーができる環境作りに動いた。