最前列で赤ん坊を抱いたお母さんが…

 安全面の観点からも、防球ネットがない観客席は危険を伴う。試合中に一塁コーチャーを務めるコーチは「僕が球場観戦するなら、怖くてあの席には座れません」と漏らす。

「打者が引っ張った弾丸ライナーの打球はもの凄い速度で飛んできます。スタンドと打者の距離が近いので、座っていたらよけられません。気になるのは、試合中もスマホをずっと見ているお客さんが少なくないことです。僕も試合に集中していますが、最前列で赤ん坊を抱いたお母さんがスマホをずっと見ていたことがあって、ボールを全然見ていないのでハラハラしました。硬球が直撃したら大ケガをする恐れがある。ファンサービスは大事ですが、選手がファンス際の打球へのストレスをなくすためにも、防球ネットはあったほうがいいですよ」

 フィールドにせり出し、防球ネットがなく、選手のプレーを間近に体感できるシートのニーズが高いことは間違いない。球場関係者は「防球ネットがない席に座るお客さんにはヘルメット着用を義務付けるべきです。頭部に打球が直撃したら命に関わります。注意しても聞かない場合は退場処分にするべきでしょう。安全面の観点で『ルールを守れないなら観戦できない』という厳しい姿勢を示した方がいい」と強調する。

 防球ネットのない観客席の必要性も問われている。観戦マナーについて、改めて見つめ直す必要があるだろう。

(ライター・今川秀悟)

こちらの記事もおすすめ 日本Sでは「指笛」が問題に…今後はプロ野球観戦で“NG行為”増加? ブーイングが禁止になる日も
[AERA最新号はこちら]