日中共同声明をはじめとした4つの重要文書の存在

 ここまで述べたことからわかることだが、今、日本は戦争に巻き込まれる道を進んでいる。しかし、そこから抜け出す道はある。

 アメリカからの自立である。

 その第一歩として、台湾有事に際して完全中立を守り、米軍による在日米軍基地の使用を拒否するという宣言をすることを提案したい。それは、日本の意思により実現可能だ。

 しかし、そこには、大きなハードルがある。

 それはアメリカが怒るということではない。日本国民が、それに反対するということだ。中国という危ない国があるのに、アメリカに見放されたらどうするのかという反対が予想されるのだ。

 そこから脱する道はあるのかと考えると、まず、日中関係を目に見えた形で良好なものに変えていくことが必須だということに気づく。国民が、中国が日本を攻めることなどあり得ないと信じられれば、安心してアメリカからの自立の道を選べるはずだ。

 そんなに簡単なことではないのは確かだが、第2次トランプ政権になってから、アメリカがいかに信用できない国であるかがわかってきた。今は、ある意味で、千載一遇のチャンスだ。

 そこで一つ提案がある。

 日中間には、1972年の日中共同声明をはじめとして4つの重要文書というものがある。台湾の位置付け、内政不干渉、平和共存、戦略的互恵関係、日本による深い反省と心からのお詫び、環境エネルギー分野での協力などが謳われ、それらを見れば、日本と中国は仲の良い友好国であり、戦争などするはずがないように思える。しかし、最近の日中関係は、そこからかけ離れた状況に陥ってしまった。

 そこで、習近平国家主席と石破茂首相の間で第5の日中間の重要文書にサインすることにより、これまでの4文書の精神を再確認し、さらに、台湾有事が近づいているという流言などの現代的状況を念頭に置いて、とにかく、日中間では「何がなんでも戦争しない」ことを約束するのだ。

 台湾有事において日本が完全中立を守るということがわかるものであれば最高だが、いずれにしても、形や文言に知恵を出すことで、何がなんでも戦争を起こさないという両国の強い意志が見える形にすることが重要だ。

 さらに、その文書には、両国が手を携えて、世界の国々と共に、平和でしかも豊かな社会を作っていくという宣言も入れる。

 その基礎となる哲学として、軍拡ではなく、世界の経済開発こそが世界平和の原動力になることも高らかに謳ったらどうか。

 その精神に則り、一帯一路やAIIBアジアインフラ投資銀行に日本が参加したり、日本が進める国際協力プロジェクトに中国が参加したりする形にしていけば、両国の関係はさらに盤石なものとなるだろう。

 もちろん、アメリカとも同様に、対等かつ友好的な関係を作ることは欠かせない。

 その二つを両立させることこそが、日本の平和を守ることにつながると私は確信している。

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