
朝から夏の日差しが照りつける。気温は30度を超え、境内にセミの声が響く。
8月15日、日本は終戦から80年という節目の日を迎えた。この日、東京・九段の靖国神社には昨年以上に朝から多くの人々が訪れ、それぞれの思いを胸に鳥居をくぐった。
午前8時過ぎ。参拝を終えた女性(31)は、青森から両親ら家族4人で車で1日かけて来たという。
「絶対に戦争をしてはいけません。私は戦争を経験していないので、それがどういうものだったかを知るためにも、今日はどうしても来ようと思いました」
靖国神社には、戊辰戦争から太平洋戦争までの戦没者が「英霊」として祀られる。しかし、ここは先の戦争の軍国主義を支えた国家神道の中心的施設であり、太平洋戦争で「A級戦犯」とされた東条英機元首相ら14人も合祀されている。
旧日本兵の格好で、戦時中に国威発揚の軍歌として広く歌われた「海ゆかば」を歌った30代の男性は言う。
「今の私たちがあるのは、英霊の皆さまが決死の覚悟で戦ってくれたから。日本の誇りを後世に残したいと思っています」

8月15日には、一部の国会議員も靖国神社を参拝する。
今年は石破内閣の閣僚では、小泉進次郎農林水産相が参拝。自民党の「ポスト石破」候補の高市早苗氏や小林鷹之氏らも参拝した。一方、現職首相による終戦の日の靖国参拝は2006年の小泉純一郎首相(当時)以来途絶えている。石破茂首相も参拝せず、代理人を通じ、自民党総裁として玉串料を私費で納めた。
野党では、先の参院選で大幅に議席を伸ばした参政党の議員も参拝した。
午前10時過ぎ、神谷宗幣代表はじめ党所属の国会議員18人と、地方議員70人の計88人が参拝。参拝後、神谷代表は記者団に対し「二度と日本が戦争の惨禍にあわないように平和を守る政治をやりたいという思いをお伝えした」と述べた。
参政党支持者で、靖国神社に参拝した都内の男性(36)は、日本の伝統や文化を次の世代に残したいという党の考えに共鳴しているという。「日本人ファースト」という党のスローガンについては、外国人を敵視する考えはまるでないといい、靖国神社に参拝する理由をこう話した。
「先人の英霊のおかげで今の日本があります。それに感謝したい」